家づくりにもオリジナリティを

家づくりにもオリジナリティを

「夢のマイホーム」などと言われるように、一昔前までは一軒家を購入することが一家の夢、幸せの象徴でした。世の中のそんなニーズを受けて、ハウスメーカーはこぞって新築を打ち出し、時代や世代に合った家のモデルを提案し続けてきました。
2021年の今、私たちにとって「住みやすい家」ってなんでしょう?ちょっと立ち止まって考えてみると、現在の日本の住宅事情や今後選択すべき道筋が見えてくるかもしれません。
今回は私たちの家づくりを通して、2020年代を生きる世代のひとつの選択肢をご紹介します。

リノベーションの可能性

このブログの他の記事でもお伝えしているように、私たちは築40年の2階建ての戸建てハウスをリノベーションしています。親の持ち物件で自由に改装できるという恵まれた状況ではありましたが、ゲストハウス用のリノベーションということで、かなり神経を使って取り組んできました。

Nafshaの物件を紹介します

仮にちょうどよく身内の物件がなかったとしても、私たちは中古物件を選んでいたと思います。現にこの物件に出合うまでは、中古の貸し物件(できれば改装可)を探しに探して、ついぞ見つからず途方に暮れていたほどです。

中古物件をリノベーションするメリットを、私たちはこんなふうに考えています。

中古物件リノベのメリット

  • 中古物件は新築よりも安く購入できる
    立地や状態にもよりますが、多くの場合が新築よりは安く手に入ります。
  • 補助金を活用できる可能性がある
    特に地方だと、移住促進と相まって行政からの補助金が入る場合もあります。
  • コスパの良いオリジナリティのある家づくりができる
    実はリノベーションは、新築よりも高くなる場合が多くあります。だたし自分なりの取捨選択ができると費用も抑えられ、オリジナリティのある家づくりができます。
須賀川市の空き家バンク

ハーフセルフという選択

「ハーフセルフ」なんて横文字にしてしまいましたが、つまりは「半分自分でやる」ということです。私たちはリノベーションにあたり、“自分たちでできるところは自分で”を意識して取り組みました。例えば、今回のリノベに必要だった壁の塗装は全てDIYで仕上げています。

またDIY以外の箇所では、リノベーションに必要な資材や設備も極力自分たちで購入し、設置はプロにお願いする「施主支給」という方法を取りました。

施主支給のメリット

  • 自分の好きな設備や資材を使える
    施工業者との相談が必要ですが、大手ハウスメーカーや工務店に依頼すると彼らの用意したカタログの中からしか選択できない場合がほとんどです。理想のイメージがある場合には施主支給がおすすめ。
  • 他にはないオリジナリティを出せる
    自由に好きなものを組み合わせられるので、人とは違う自分だけの家づくりに近づけます。

施主支給のデメリット

  • 施工業者にしっかりとした説明が必要
    いつもとは違う資材や設備だと、施工業者が慣れていないため上手く施工してもらない場合があります。住宅産業はびっくりする程「責任区分」を分けたがる分野。買ったのは施主さんだから、上手く取り付けられなくてもこっちの責任じゃないからね~と言われないためにも、事前のしっかりとした説明と確認が大切です。
  • 全体のバランスを考える必要がある
    全てパッケージ化されたハウスメーカーの家づくりでは、提示された中から選べばある程度の空間に仕上がります。施主支給の場合、選んだ資材同士がマッチするか、施工性はどうか、配色やサイズのバランスなども全て自分で把握する必要があります。

みさと

手間と時間がかかるのが施主支給。だけどその分学びにもなるんだよね。

職人さんと二人三脚でつくる家

私たちのリノベーションの一番のポイントは、地元の職人さんや作家さんと一緒につくり上げたという点です。水回り(風呂・トイレ・洗面所)以外は近くで一人大工さんに施工を依頼し、カーテンや照明も地元の作家さんにオーダーをして制作してもらっています。

和室

和室のカーテンは地元の布物作家さんへ依頼。

大工仕事は地元の木工作家さんへお願いした。

一人大工の何がいいか。それはまずコストが抑えられること。2~3人で施工するとそれだけ人件費がかかります。その点、一人大工は常に1人分のコストで済みます。相場の一人工より多少多く支払ったとしてもさほどの負担にはなりません。
そしてなんと言っても「相談しながら進められる」という点が大きいでしょう。私たちがはじめに施工を依頼した工務店は、この点が全く出来ませんでした。つまりは「いつものやり方」でないと受け付けてくれないのです。失敗するリスクが高まるということと、単に工数が増えて面倒くさいという二点が理由としてうかがえます。その点一人大工さんとは、工務店には言えなかった気になることや心配事を細かに伝えることができました。もちろん職人さんにもよるかと思いますが、一人である分、ある程度の柔軟性を持って対応してくれるということは大いにあり得ます。

職人さんとつくる良さ

  • コストを抑えられる
    直接やり取りをするため「仲介料」がありません。また一人大工であれば人工(人件費)も少なくて済みます。
  • 相談しながら進められる
    決まった業者に決まったやり方で発注されるわけではないので、実際の現場を見ながら相談して家づくりを進められる可能性があります。私たちも素材の一つ一つを都度相談しながら決めていきました。
職人さんに頼むことは、技術の継承や保持にも役立つと思うんだ。

あきら

作家さんとつくるについてのnote記事

施主は自分。家づくりのオーナーシップを諦めない

当たり前のことですが、現在の住宅サービスでは「施主が主役」という点が見落とされている気がします。前述の通り、現在の「家づくり=大手ハウスメーカー新築」という流れの中では、どこまで行っても結局は「提示されたもの中から選ぶ」という域を出るのが難しいのが事実です。もちろん、既存のサービスが全てNGと言っているわけではありません。しかし一方で、もう少し選択肢に多様性があってもいいんじゃないかと思う気持ちもあります。
家づくりは何百万・何千万という大金を費やして行う人生の一大イベント。「プロがそう言うから」「これが流行っているから」という言うだけの理由で、向こう30年とか40年の家と共に歩む人生を選んでしまっていいものでしょうか。

都会に住んでいる頃、数日で建ってしまう新築の家を見ながら「まるで一夜城だな」とよく思っていました。早く・簡単にできる家は、もちろんその分コストも安く、忙しい現代人のスケジュールにも合っているかもしれません。だけどその一方で、大型のプラモデルを組み立てるようにしてできる家の中には、これまで日本の大工が培ってきた技術や知恵を継承する余地は残されているのか、疑問も残ります若い大工さんは決まったマニュアルに沿って組み立てればいいだけの家を作り続けるため、熟練した技術を学ぶ機会は多くはないでしょう。一方で、雇われている分決まった給料をもらえるので収入は安定します。一概に「こっちが良い」とは言い切れませんが、自分の選択した裏にどんな背景が潜んでいるのか、家をつくる時くらい考えてみてもいいのではと個人的には感じます。

家づくりは最大の学びの機会

家づくりをする時には、「住」に関わるありとあらゆることを考えなければなりません。これって本当に面倒くて、時間も手間もかかる作業です。でも私たちは2年という年月を費やしてリノベーションに向き合って、心から良かったと思っています。
それは単に専門的な知識に触れられた、というだけでなく、「自分たちの理想の暮らしって何だろう」「日本の住宅産業ってどうなってるのかな」と言った、暮らし全般に関する興味が湧いてきたという点にあります。木造で持って35年と言われている日本の住宅の、その次の35年をデザインするようなリノベーションに挑戦して、私たちは何というか、自分たちの世代の仕事をひとつ果たしたな、という気分になっています(大げさですな 笑)

だけどこの知識と経験は、自分たちの子どもにも伝えられるもの。そう考えると「家」という不動産の価値とは別の、かけがえのない財産を残してあげられる気がしています。
自分で考え、調べて実行する。家づくりにもそんな主体性を持って取り組みたいという人は、ぜひリノベーションも選択肢に入れてみてはどうでしょうか。

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